櫛田神社は、伊勢神宮外宮の禰宜であった度会氏の祖先神である大幡主命(大若子命)を天平宝字元年(757)の詫宣により伊勢国櫛田神社から勧請したのが創建です。
大幡主命(大若子命)は、本来の名を大若子命と云い、垂仁天皇の御代に天照大神が伊勢に御鎮座するまで、弟の乙若子命と共に倭姫命に仕え、天照大神の御傍を離れず供奉したとされています。殊に越国の凶賊であった阿彦征伐を命に勅して標剣を賜り、大いに旗(幡)を掲げて退けた勳功から大幡主命の御名を賜わったとされています。大幡主命を博多総鎮守産土神として正殿に鎮め祀ったのは夷狄征伐の神宣に依るものとも言われています。往古は相殿に奉斎されていた弟の乙若子命は、後、境内社に遷りますが現在は相殿に奉斎されています。
左殿に祀られる天照皇大神の由来は定かではありませんが、大幡主命(大若子命)の奉祀と併せて、勧請されたとも、後に合わせ奉ったとの説もあります。
右殿に祀られる素戔嗚尊の奉祀は、天慶4年(941)の天慶の乱(藤原純友の乱)に際し、追捕使の小野好古が反乱の鎮定のため山城国祇園社に神助を祈願した由縁に因ります。小野好古は精兵を率いて博多津で賊軍を攻めて討伐しまた。その功を速やかに山城国祇園社へ奏し、御分霊を勧請して御神助を祈ることとなったとされています。
元弘3年(1333)3月13日には後醍醐天皇から倒幕の密勅を得た菊池武時が、勤皇の旗を飜して鎮西探題の北条英時を博多に攻めた時、神威の加護を祈るため当社の御前にて上指の鏑矢に「武士の上矢の鏑一筋に思ひ切るとは神は知らずや」と短冊を附けて神前に奉納したと伝えられ、朝野の篤い尊崇を集めました。その後、戦乱により数々の兵火に罹り荒廃しますが、天正15年(1587)豊臣秀吉の博多復興にあたり現在の社殿の建立寄進がなされました。
古来より不老長寿・商売繁昌の「お櫛田様」、殖産興業・陸海交通の守護神、また開運・厄除・不老長寿の神として今日の社頭の隆盛を見るに至っています。明治24年(1891)に県社に列し、現在は別表神社の指定を受けています。
【神事・祭事】
「博多祇園山笠」
7月1日~7月15日にかけて斎行される博多祇園山笠(祇園祭)は、右殿に祀られる素戔嗚大神(祇園宮)に対する氏子の奉納神事です。山城国祇園社を勧請した天慶4年(941)当初から始まったとも、仁治2年(1241)承天寺の開祖である聖一国師(円爾)が、当時博多に流行した病魔退散の祈願をした時、木製の施餓鬼棚に乗り追い祈祷水(甘露水)を撒きながら町を清めてまわり、疫病退散を祈祷した町人が担ぎ廻ったのが始まりともされています。
中でも7月15日午前4時59分から始まる「追い山笠」が最大の見せ場となっており、太鼓を合図に各山笠が順々に櫛田神社境内になだれ込む「櫛田入り」から須崎町昭和通り沿いの「追い山廻り止め」まで一気に駆け抜ける時間を競う姿は実に勇壮です。国重要無形民俗文化財。
高さ約16mの豪華絢爛な飾り山笠は、神話、軍記、伝説、お伽話等を題材にし、「流」と呼ばれる街の区割りによって立てられます。各流の山笠は、7月1日~14日の深夜まで各所で「飾り山笠」として公開され、7月12日午後3時59分からの「追い山ならし」。7月13日午後3時30分からの「集団山見せ」を経て、最後の7月15日午前4時59分からの「追い山笠」に望むこととなります。
「博多おくんち」
10月23日~10月24日。宮中で行われていた五節句の一つ、重陽の節句(陰暦九月九日=お九日・お宮日・お供日)を祝う祭り。牛車にひかれる神輿行列、ブラスバンド、稚児行列等が色どりを添え、豪華絢爛に御神幸が繰り広げられます。
【境内社など】
注連懸稲荷神社
- 社殿裏右手に鎮座。豊受比賣命(倉稲魂命)。別名:あしどめ稲荷。商売繁昌の神。刀の神。五穀豊穣の神。開運の神。芸事化粧の神。金融の神。
社殿裏に並んで8社が鎮座。右から松尾神社、諏訪神社、金刀比羅宮、皇大神宮、竃門神社、今熊野神社、天満宮、石堂神社。
松尾神社(大山咋神)
- 酒造の神。醸造の神。農業の神。雨請いの神。山林の神。
諏訪神社(建御名方神)
- 武道、スポーツの神。狩猟の神。農業の神。健康の神。
金比羅神社(大物主神)
皇大神宮(豊宇気比売神)
- 食物の神。農業の神。酒の神。寿司菓子の神。染物呉服の神。
竃門神社(奥津彦命・奥津姫命)
- かまどの神。家内安全の神。
- 合祀:淡島神社。少彦名神。婦人病。医薬の神。
- 合祀:白鳥神社。日本武蔵命。鳥の神。防火の神。
今熊野神社(伊弉冉命)
- 家内安全の神。
- 手置帆負神社。手置帆負命。工匠の神。林業の神。造船の神。
- 少彦名神社。少彦名命。病気平癒の神。温泉の神。
松木天満宮(菅原道真)
石堂神社(吾田片隈神、宗像三神[多紀理比売神、狭依比売神、多岐都比売神])
- 国防の神。海難救助の神。海上安全の神。航海の神。交通安全の神。
二十二社
- 二十二柱の天神地祇。天候の神。旅行の神。山の神。田の神。海の神。開拓の神。武の神。相撲の神。織物の神。道祖神。
境内社の鳥居(鳥居のみ)
- 現在は、末社として祀られている境内社の旧鎮座地で奉納されていた鳥居です。手前から、石堂宮、今熊野宮、諏訪神社、金毘羅宮、松尾宮、天満宮です。
夫婦恵比須神社
- 事代主大神。玉櫛姫大神。大漁満足。商売繁昌。夫婦円満。良縁成就。開運。航行安全。12月2日~3日(両日共に千座式)。男女二神の恵比須様を祀る珍しい神社です。
白龍権現社
- 白龍権現。商売繁昌の神。金成の神。幸福の神。財布の神。
児安社
- 子安観音。慈母の功徳。養育の功徳。知恵の功徳。安産の功徳。水子の供養。
霊泉鶴の井戸
- 社殿前の霊泉鶴の井戸は、櫛田神社で最も古い井戸です。いつの頃からか塩分濃度が高い水質に変わり今日に至っています。本殿真下近くから湧き出ていることから、不老長寿の御霊水として大切にされてきました。現在は、飲用できなくなっています。